一粒一粒に栄養いっぱい!腸活におすすめの食品:納豆《腸の辞典》

日本人になじみのある「発酵食品」というと…

納豆、甘酒、ぬか漬け、キムチ、ヨーグルト、チーズ、味噌、醤油、酢、本みりん、塩麴、醤油麹などいろいろな種類がありますね。

「大豆」と「納豆菌」からできる納豆は、腸活をする人にとって理想的な発酵食品のひとつです。

「納豆は健康にいいから」と腸活を意識したことのない方でもふつうに食べている方も多いのではないでしょうか。

スーパーで気軽に買えて値段も庶民的で嬉しい納豆。
納豆ならではの成分も魅力的です。

身近ですが、やはり、すごい!そんな納豆についてご案内します。

1.納豆あれこれ

納豆は何からできてるの?

原料は「大豆」と「納豆菌」のふたつです。

大豆以外の小豆、ひよこ豆、レンズ豆などの豆類で納豆を作ろうとすると、納豆菌が育たない、糸が引かないなどいずれも納豆にはならないそうです。

納豆菌も大豆でないと、「ナットウキナーゼ」「ねばねば」「独特の香り」などの成分が作られないのです。

納豆の種類

納豆は大きく分けて2種類あります。

1.糸引き納豆:わたしたちがいつも食べている納豆です。

大豆を蒸して、納豆菌を加えて発酵させて作ります。ねばねば糸を引きます。
糸引き納豆は「粒(丸大豆)納豆」「ひきわり納豆」「五斗(ゴト)納豆」の3つに分かれます。

粒(丸大豆)納豆は、大豆を丸ごと蒸して納豆菌を加え発酵させます。
ひきわり納豆は、あらかじめ大豆をひき割り、皮を取り水に浸してから蒸して、納豆菌を加え発酵させます。
五斗(ゴト)納豆:山形県米沢地方に昔から伝わる郷土食。ひきわり納豆に麹や食塩をまぜて樽に仕込み、熟成させたものです。
現在では塩分を減らし「雪割り納豆」とういう名で売られています。

2.寺納豆:別名塩辛納豆、浜納豆とも言われます。

蒸した大豆に麴菌を接種して作った麹豆を塩水に浸して発酵、熟成させ乾燥した納豆です。
糸は引きません。
出来上がりの色は黒褐色。塩味と旨味がある納豆です。

そのまま食べたり、中国の「豆鼓(トウチ)」のように調味料として料理に使います。

※このコラムでは糸引き納豆の「粒納豆」と「ひきわり納豆」についてお伝えしていきます。

2.納豆に含まれる栄養

納豆の栄養(粒納豆ときわり納豆)

納豆は納豆菌の力によって原材料の大豆より栄養価がアップしています。
納豆の主な栄養素をご紹介します。

◍五大栄養素

納豆には「畑のお肉」と呼ばれる植物性たんぱく質、わたしたちの健康を維持するために必要な栄養素である、5大栄養素のほとんどがバランスよく含まれています。

①たんぱく質
②脂質
③炭水化物
④ビタミン(K、B群、E、など)
⑤ミネラル(カリウム、カルシウム、リン、鉄、など)

◍その他の栄養

食物繊維

第六の栄養素といわれる食物繊維は粒納豆で6.7g/100gあたり。
大豆が原料なので、不溶性、水溶性のどちらの食物繊維も豊富に含まれています。

一日当たりの食物繊維の摂取目標が成人男性で19g以上、成人女性で17g以上です。
納豆ひとパック50gのものだと女性なら約20%の食物繊維が摂取できます。

ポリフェノールの一種:大豆イソフラボン、大豆サポニンなど

※粒(丸大豆)納豆とひきわり納豆は製造行程や発酵過程の違いにより栄養素の値や種類にちがいがあります。(その一部を掲載)

粒(丸大豆)納豆ひきわり納豆
ビタミンE(トコフェロール)9.9㎎15.5㎎
ビタミンK600μg930μg
ビオチン18.0μg
食物繊維6.7g(不溶性4.4g 水溶性2.3g)5.9g(不溶性3.9g 水溶性2.0g)
※100gあたり 文部科学省 日本食品標準成分表2020年度版(八訂)より

※コレステロール、塩分がゼロなのはうれしいですね。  

3.納豆の嬉しい健康成分

栄養バランスが優れている納豆。

納豆は原料の大豆の良さを受け継いでます。
更に、大豆と納豆菌が発酵していくなかで成分を増やしたり、新たな成分を生み出したりしています。
そして、よりパワーアップした発酵食品になっています。

大豆に納豆菌を加えて発酵するとどのような嬉しい成分が生まれるのかいくつかご案内します。
その前に納豆菌についてご紹介します。

納豆菌の特徴

①納豆菌は稲わらなどにすむ枯草菌(こうそうきん)の1種。畑や田んぼ、枯草の存在し、稲わらに多く生息しています。

②加熱(100度もOK)や低温、酸にも強いので胃酸にも負けず、生きたまま腸に届きます。

③自ら腸内で善玉菌として働き、また他の善玉菌を増やし腸内環境を整える効果があります。

④納豆菌は前述の通り、高温、低温、酸にも強いうえ、増えるスピードも早いです。

そんな最強と言われる納豆菌ですので「酒、醤油、味噌」などの蔵やパン工房などで、他の麹菌や酵母を扱うひとは、納豆菌の影響を受けないように納豆を食べないようにしています。
また、蔵を見学する人も、見学前に納豆を食べて行かないよう注意が必要ですね。

ご家庭で、醤油麹、塩麴、ぬか漬けなど発酵食品を扱うときも納豆にはご注意ください。

嬉しい成分

1.ナットウキナーゼ:血栓症抑制、他
ナットウキナーゼは納豆菌が作り出す納豆独自の酵素です。
①血栓を溶かし血栓症を抑制する効果(脳梗塞や心筋梗塞の予防)
②高血圧予防効果
③コレステロールを下げる効果
などが期待されます。
※ナットウキナーゼは熱に弱いので摂るさいに注意が必要です。

2.ビタミンK2:骨粗しょう症予防、血液を固める働き
カルシウムを骨に沈着させる働きがあります。
骨粗しょう症が気になる方、骨がもろくなりやすい女性に納豆はおすすめです。
骨を強くしてくれるので、成長中の子どもにもいいですね。
他に、血管が傷ついた時に血液を固めて傷口を塞いでくれる役割をします。
※脳梗塞や心筋梗塞などの予防で抗凝固薬のワーファリンを服用している方は、
ビタミンK2が薬の効果を弱めてしまうため、食べることはおすすめしません。

3.大豆イソフラボン:女性ホルモンと似たはたらきをする
女性ホルモンを整えるために、豆腐や豆乳を食べる方も多いと思います。
納豆は大豆が発酵しているので、大豆をそのままとるよりイソフラボンがからだの中で活用しやすくなっています。
生理前に過食や便秘になる方、更年期障害を和らげる対策などにおすすめです。

4.ビタミンB2:ダイエット、粘膜、皮膚を保護
疲労回復のビタミンと呼ばれるB群。
やや不足しがちな水溶性ビタミンです。         
大豆にもB2は含まれていますが、大豆のまま食べるより、発酵した納豆でとる方がB2が多く含まれています。
B2は脂肪のエネルギー代謝を促進させるのでダイエット中の方にも。
また、皮膚や粘膜を保護してくれます。
不足すると口内炎、舌炎、皮膚炎などを生じます。

5.ポリアミン:アンチエイジング
納豆はポリアミンを多く含む食品のひとつです。(他、大豆、しいたけ、ピーマン、とうもろこし、たらこ、鶏レバーなど)
ポリアミンは人が生きていくうえでその生命活動を維持するのに欠かすことができない存在です。残念ながら、細胞内のポリアミンをつくる能力は加齢とともに低下し減少します。
肌にハリ、つやがなくなるなどのいわゆる老化現象のスピードを遅らせるアンチエイジング効果があります。
食品からとることで不足したポリアミンを補うことができます。

4.腸活におすすめの3つの理由

腸活にはいろいろな方法があります。その中で「毎日の食事」は大切です。

納豆を、今度は「腸活」「腸内環境を整える」という点からみてみましょう。

腸の中の腸内細菌のバランス

わたしたちの腸内には、大きく3種類の腸内細菌がいます。
その理想的なバランスは
善玉菌   悪玉菌   日和見菌(ひよりみきん)
 2  :  1  :   7

日和見菌は善玉、悪玉菌のどちらか優勢な側の味方になります。
バランスを保つには善玉菌を増やすことが大切になります。
腸内細菌のバランスが整った状態を「腸内環境が整う」とよんでいます。

腸内環境を整えるには

①善玉菌を含む発酵食品「プロバイオティクス
②善玉菌を増やすエサになる食物繊維やオリゴ糖などを含む食品、
プレバイオティクス」の両方を摂ることが大切です。

この二つを組み合わせて摂ることを「シンバイオティクス」といいます。
「シンバイオティクス」をわたしたちの食生活にとり入れ腸内環境を整えていきましょう。

1.消化を助けます

納豆には納豆菌が作り出す消化酵素がたくさんはいっています。
納豆と一緒に食べたおかずやごはん等の消化吸収分解を助けてくれます。
胃腸の負担がやわらぎ腸の動きがよくなると、便通がスムーズになります。

2.納豆菌は生きて腸まで届きます

納豆菌は高低温、乾燥、酸にも強い特殊な細胞構造をもっています。
それにより、胃酸に負けず生きて腸まで届きます。
そして、腸内では自ら善玉菌として働き、腸内にいる善玉菌を増やす働きをして、悪玉菌の増殖を抑えます。
その結果、腸内細菌のバランスが理想に近づいていきます。

3.整腸作用にダブルの効果

納豆は単品で、納豆菌(プロバイオティクス)と大豆(プレバイオティクス)の相乗効果が期待できる腸活に理想的な食品です。
後述の「6.腸活をサポートするおすすめの食べ方」にもご紹介していますが、さらに、食物繊維やオリゴ糖を多く含む食品(プレバイオティクス)と一緒にまたは、善玉菌を含む他の発酵食品(プロバイオティクス)を組み合わせて食べる事でダブル、トリプルの整腸作用が期待され、腸内環境の改善に役立ちます。

5.効果を活かすには、いつ、どのくらい食べる?

栄養豊富な納豆。

効果を活かすにはいくつかポイントがあります。

1.たくさん食べなくてもOK⇒お好きな方も1日ひとパック位までに(40~50g)

他の食品からとれる栄養を考え、とり過ぎに注意しましょう。
納豆に含まれる「大豆イソフラボン」は過剰にとると女性ホルモンのバランスを乱してしまう恐れもあります。
また、納豆は苦手、腸活、健康のために食べようという方は1日1/4パックでも大丈夫。
続けてとることが大切です。

2.朝食べる派

1日の始まりに食べる納豆は、ダイエット中の方におすすめです。
良質なたんぱく質が日中活動する際の代謝をアップしてくれます。
血行もよくなるので冷え性の方にもおすすめです。

3.夜食べる派

納豆の成分「ナットウキナーゼ」は血栓予防に効果があります。
血栓は明け方にできやすいです。
夜に食べると効果が10時間ほど持続するので、血栓が起こりづらい状態にしてくれます。 

睡眠中はからだがメンテナンスをする時でもあります。
寝ている間に成長ホルモンの働きで肌のダメージが修復されます。
納豆の成分「ビタミンB群」が成長ホルモンに働きかけることで肌の修復力が高まります。

※睡眠中は代謝が下がっているので、寝る直前に納豆を食べると栄養を消化できなくなってしまい、栄養過多、肥満になるリスクも考えられます。

4.ナットウキナーゼ:食べる温度に注意

ナットウキナーゼは熱に弱く50度以上になると活性が低下、70度以上で死滅してしまいます。
納豆チャーハン、納豆汁など加熱調理すると、ナットウキナーゼの血栓症や高血圧予防効果を活かせなくなります。
ご飯にのせて食べるさいには、炊き立てあつあつに納豆ではなく、少し冷ましたご飯か、納豆は別にして食べましょう。

※納豆菌は高温に強いので加熱調理や熱々ご飯にのせて食べても菌は死にません。

6.腸活をサポートするおすすめの食べ方

納豆の食べ方には、凝ったアレンジレシピから薬味を足すなどのお手軽なものまで様々なバリエーションがありますね。

納豆は単品で、腸内環境を整える「プロバイオティクス×プレバイオティクス=シンバイオティクス」効果が期待できます。

ここでは、納豆にプラスして更に腸活をサポートする「ちょい足し食材」をご紹介します。

◍食物繊維を含む食品と一緒に【善玉菌のエサになるプレバイオティクスの役割】
(水性食物繊維は便をやわらかく、不溶性食物繊維は便のカサを増す⇒腸内環境を整えてくれる)

①オクラ
ヌルヌル成分は水溶性の食物繊維です。
胃液を保護する働きがあり、たんぱく質の消化を助けてくれます。

②もずく
ミネラルが豊富なもずく。腸内の悪玉菌を吸着し排出してくれる作用があります。
※もずくは合わせ酢などの液に浸していないものを選びましょう。

③アボカド
さまざまな栄養が豊富な果物です。他の果物と比べ糖質量が低く野菜のように食べられます。
アボカドに多く含まれるカリウムはとり過ぎてしまった余分な塩分(ナトリウム)を外に排出してくれる働きがあるのでむくみ、血圧が気になる方にもおすすめです。
また、納豆に少ないビタミンCを補うことができます。

④大根
食べ物の消化を促進する酵素が消化を助け胃もたれや胸やけを防ぎます。
大根の葉は、白い部分に含まれていないビタミンや多く含まれている栄養素もあります。
刻んで一緒に食べるとよいでしょう。
※納豆にちょい足しするときは、大根おろしなどの生の状態で食べると調理で流れてしまいやすい栄養(ビタミンC、カリウムなど)をきちんととることができます。

◍オリゴ糖を含む食品と一緒に【善玉菌のエサになるプレバイオティクスの役割】

①玉ねぎ
善玉菌のエサになるオリゴ糖が含まれています。
善玉菌を増やして腸内環境を整えてくれます。
この他、玉ねぎには他の野菜にはない特有の栄養成分をもっています(ファイトケミカルの1種のケルセチン、アリシンなど)
これらには、抗酸化作用、疲労回復、食欲増進、血流改善などの効果があります。
玉ねぎの栄養素を逃さないように、水にさらさず生のままみじん切りにして納豆と一緒に食べましょう。
辛みが苦手なかたは、乾燥玉ねぎを利用するのもいいですね。

◍他の発酵食品と一緒に(相乗効果)

味的に納豆と合う発酵食品を2品ご紹介します。
更に別のプロバイオティクスを含む食品を足すことで納豆菌と乳酸菌などのふたつの善玉菌の効果が期待できます。
どちらかひとつだけ摂っていて効果を感じない方は両方を合わせて摂る方法もおすすめです。

①キムチ
白菜などの野菜を乳酸発酵させています。
乳酸菌が豊富、整腸作用があります。
食物繊維も豊富に含み、使われている唐辛子は発汗作用もあり、代謝アップ効果も期待できます。
キムチはきちんと発酵していて添加物が使われていないキムチを選んでください。

②ぬか漬け
キムチ同様、植物性乳酸菌が含まれています。
キムチ、漬物には、塩分が多く含まれています。適量を食べるようにしましょう。

※納豆に付いているたれには、添加物が使われていることがあります。
その際はたれは使わず、ご紹介した食材をプラスしたり、えごま油、オリーブオイル、お醤油、醤油麹、塩麴、酢、塩などで召し上がっていただくことをおすすめします。

まとめ

一粒一粒に栄養がたくさんの納豆。

身近な発酵食品のひとつですが、1日に食べる分量、時間、効果的な食べ方などのポイントを知って摂っていくことでより腸活に役立てていきましょう。

発酵食品は一度にたくさん食べるのではなく、毎日の食事にバランスよくとり入れてください
外から入ってきた善玉菌は、腸内に棲み続けることができません。

そのためにも続けて摂っていくことが大切です。

参考文献
食品成分データベース
https://fooddb.mext.go.jp/result/result_top.pl?USER_ID=13758&MODE=0
あづま食品株式会社
https://www.adumas.co.jp/familyproduct
mizkan
https://www.mizkan.co.jp/product/
全国納豆協同組合連合会納豆PRセンター
http://www.natto.or.jp/hyakka/ped_tyoju08.html
食物繊維の必要性と健康」e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-001.html

✒執筆者
「腸の学校」認定講師
石井朝子(ISHII ASAKO)

石井朝子インストラクター
もっと知りたい方はコチラ▽